念願の911を手にした直ぐ様ではあるが、ポルシェ911にしかり、ポルシェのデザインは果たしてカッコいいのだろうか?
オーナーの声を聞いていると概ね「カッコいい」と評価される。美しい車ランキングでも必ず上位にランキングされ特に911はその走りの性能と歴史的評価も相まってカッコいいと評判である。(一部涙目時代を除いて。しかし最近ではそのエンジンの希少価値から個体として見直され、同時にデザインまでも「これってカッコいい?」ってな具合で評価されつつある。人は回りが言うことに同調されるのか)
がしかし本当にカッコいい?

そもそもカッコいいとは『好み』である事は否めないし変化していくものでもあるが、人々がカッコいい、美しいと感じるデザインはある程度集約される。もちろん文化や環境によって左右されるが概ねプロポーションとオーダーの整理と色だ。
その上でポルシェは911を初めとしてプロポーションが整理されていてオーダーに均整がとれている。幾度もデザインラインに検討を重ねて産み出されたのか、それとも天才がラインを引いたのか、または天才がデザインマニュアルを残したのか。

いづれにしても911はデザインとして創成期からそのスタイルは変わらない。ポルシェのデザイナーは言う「ポルシェ911のデザイナーは世界一怠惰なデザイナーだ」と
ブランドとして
確かにアイコニックとしての911は過去それを何度か覆そうと試みたのは歴史を見てもわかる。しかしその度にユーザーから反発を受け今のデザインラインナップから離れることを余儀なくされた。デザイナーは常に新しいものを提案したいし、やはり前のアイコンはデザインしていて飽きるのでなにかを変えたくなるし壊したくなる。「自分ならこうする」と。現に911以外はトレンドを意識しながらデザインラインナップが展開されていて比較的自由なデザインラインナップではあるので昨今のデザインの縛りがあるのはポルシェの屋台骨である911だけとも言える
変えられないのは必ずしもデメリットであるはずがない。それができるのもポルシェ911と言うアイコニックがあるから成立しているし、ブランドとしてはとても恵まれている。それはランボルギーニにしても顕著だ
マルチェロガンディーニが残した『カウンタック』と言う呪縛に今も捕らわれているかどうかはわからないがあの楔型を始祖とするプロポーションをであることがランボルギーニをランボルギーニたると言わしめて要る所以だ。

ウルスに至ってもその思想は貫かれている。逆に今まさにそうであることがブランドしてのランボルギーニであることをデザイン戦略としてしゃぶりつくそうとしている。
過去には同じくガンディーニのデザインである美しい車と評される現に美しいしカッコいいであるミウラはカウンタックとは一線を画しているがアイコニックには至らなかった

ランボルギーニ以外そう言ったブランドデザインを持っているメーカーはそうは多くはない。
少しブランドに話がそれたが本題であるポルシェ911のデザインに話を戻そう。ポルシェ911のデザインはカッコいいのか?
正直に思うとそうでもない。
スーパーカー少年として、当時軒並み並んだフェラーリ512やカウンタック等のスーパーカーの中でポルシェはなにか見劣りするものが記憶にあり、どうしてもカッコいいと思えなかった。それは今も引きずっている。
カッコいいとは
そもそもポルシェ創成期からもつあのラウンディッシュな造形やカエルを彷彿とさせるヘッドライト。どこか「ポワン」とした愛着のある姿。その形容詞は一般にカッコいいと言うベクトルとは同一線上にはいない。ここでカッコいいとは何かと言う定義になるのだが、過去一般的にカッコいいとされるのは強さ、精悍さ、洗練、スピード感、意志の強さ等鋭利をイメージするものである事が多い。この形容詞は一般的にシャープで鋭利なものがそれに当てはまる。
ロングノーズショートデッキ
スポーツカーのデザインが特にそうだ。スーパーカーブームを経験した人ならその時代のカッコいいと言われるフォルムは車高が低くて幅広くロングノーズのショートデッキで鋭利である事が多い。特にスポーツカーのロングノーズショートデッキのプロポーションが持つ伝統的美しさは他者を寄せ付けないカッコ良さがある。日本刀と同じベクトルにいる。見ていて惚れ惚れするのだ。多分に好みも入っているとは思うが
AMG-GT、メルセデス-SL、 BMW-Z4、 トヨタ2000GT、フェアレディZ、ジャガーEタイプとざっとあげてもそのどれもがカッコいい。

ポルシェ911のデザインは昔からそのベクトル上にいないのだ。それこそが見ているだけでうっとりとさせるデザインに至らないのだろう。
だが、水冷になった996型から911のデザインに変化が感じられるようになった。997型では涙目のアイコンが批評を喰らったがプロポーションを決める要素に安全規格と環境への対応が関与する。スポーツカーとしては不利に働かざるを得ない軽量化への道が閉ざされたのだ。だがしかしその規格をカバーするために産み出されたのかどうかはわからないがデザインが奇しくもプロポーションの比率を変化させカッコいいと感じさせる方向へと向かった。
そして更に強く強いらされた安全と環境への対応が991型のプロポーションを又更に良く見せる結果となった。けっしてロングノーズショートデッキのプロポーションになったとと言うことではなく全幅と車高の比率、それぞれのディテールがラウンディッシュからグラマラスな方向へと変化したのだ。

レイアウトの変化はないがトータル的なプロポーションが変化した。顕著なのが横幅。それこそがやっとカッコいいと見とれる思える形へと進化を遂げた。更に992型では要所のディテールにエッジ感が加わりラウンディッシュだけではない面の切り返しの緊張感が生まれ更にカッコいいフォルムと成った。
けっして上から目線ではないがやっとこのポルシェなら何としても欲しい!と思わせるデザインが成ったのだ。
グラマラス
そしてその大きくならざるを得なかった進化はポルシェのアイコンとして創成期からあるのリアビューである、あのグラマラスなタイヤハウスとその上に乗ったキャビンの対比にも強く働きかけ、更に見とれるヒップが結果出来上がった。

それはけっして昔からのポルシェファンにとって受け入れがたいものなのかどうかはわからないが、デザインとしてはとても魅力的になったと思っている。
カラー
最後にポルシェがカッコいいと思わせる1つの要素がボディーカラーにある。一つ一つの色の精度がとても高い。それはラインナップの中でもソリッド色に強く現れている。色深度も深くて微妙な色味の味付けが素晴らしい。幾度も検討した結果である事が色1つ見てもわかる精度だ。

その自信はオーダーカラー受注であるPTSプログラムにも反映され、オーダーで顧客の要望に対応するのは勿論、過去に発売されていたカラーも選択できる。

911にはマイアミブルーが選択できないみたい
総じてロングノーズショートデッキでは無いからカッコいいとは言えない。みたいになったが、ある意味それは真実であると思う。
今まで「ポルシェは良いけどあの形がなぁ」とどこか心の奥にわだかまりとしてあったものが全て消えて手放しでかっこいいと思えたとは言わないが少し残した手を伸ばして掴みたいと思わせてくれたポルシェデザイナーに感謝!
